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屋久島の本当の魅力を旅する

解る人には解る屋久島の本当の魅力と見どころ探し。屋久島の情報が氾濫する中、何を信じてどのように旅すれば満喫できるのか、そんな屋久島旅のヒントを含めてお話します。

「縄文杉のほかに、屋久島って何か観るところあるんですか?」
 屋久島を訪れる旅人から、ほとんど毎回聞くことのある言葉です。私はゲストハウスをやっており、実にさまざまな旅人とお話しする機会を持ちますが、中には九州を旅するついでに、今はやりの屋久島にも足を伸ばしてみよう程度の軽い気持ちで来島する人も少なくないのです。
 そんな時、私は彼らに、
「屋久島は、縄文杉以上に素晴らしい自然が溢れている島なんですよ」
と答えています。
 山あり海ありと言うところは各地にあるでしょうが、山も一級品、海も一級品となってくると屋久島をおいてはそう多くはないと思います。おまけに、森や川や温泉まで揃っており、観光資源的には申し分のないところなのです。そのうちとっておきのいくつかをご紹介しましょう。
 ヤクスギランドの一番長い150分コースの一番奥から登る太忠岳(たちゅうだけ)という山があります。この山は頂上に天柱石と言う、高さ50mほどの細長い岩が立っている山ですが、ピークを目指してひたすら登るのではなく、その途中にある「天文の森」を始めとする深い森に身を浸してみる山だと思います。必ずしも頂上にたどり着かなくてもそれで十分な山なのです。
 モッチョム岳と言う山が島の南にあります。この山の中腹には万代杉(ばんだいすぎ)やモッチョム太郎と言う屋久杉があります。急な登山道を息を切らせて登って行くと、忽然と現れて私達を迎えてくれます。縄文杉は、確かに古くて大きくて威厳のある杉だとは思いますが、何しろ訪れる人が多過ぎて神がかり的なイメージを感じ取るのは、今や難しい気がします。しかし、万代杉は訪れる人もさほど多くはなく、しばしば貸し切り状態になります。屋久杉とじっくり対峙するには、むしろこのような訪れる人の少ないものの方が向いているように思います。
 ただ屋久島というところは、ガイドブックなどに紹介されている、いわゆる「観どころ」と言われるポイントポイントを押さえて(行き潰して)観光するところではないと思います。自分で自分の旅のスタイルを積極的に創造し、それに相応しい場所を探し歩いて、見つけたお気に入りの場所には何度も訪れ、そこに身を委ねるような旅をするところなのです。だから、ガイドブックにも載っていない名もない海岸で、誰にも邪魔されずに、ひがな一日海を観て過ごしてもいいのです。
 このような旅先での過ごし方は、多くの日本の旅行者にとっては苦手な旅の形であるとは思います。しかし必ずしもみんながみんな苦手にしているわけではなく、中には自分の旅を創って満喫している人も少なくないのです。私どものお客さんで、60連泊もしていながら、毎日、宿のすぐ下にある岩場へ降りては、いつやって来るかも分からないきまぐれなウミガメが、息つぎに浮上してくるのをの〜んびり待ってまどろんだり、河口付近でも水のきれいな川に泳ぎに行ったり、夜、庭に寝転がって満天の星空から流れ星が零れるのを数えたりして過ごしている人がいました。またある旅人は忙しい仕事の合間に取った3日の休日を、「何もしないぜいたく」のために島を訪れ、晴れた日は海からの風に吹かれ、雨の日は宿の大きな窓を洗う風雨をひたすら見つめていました。
 確かに屋久島は今ブームで、テレビを始めとするマスメディアにひっきりなしに登場しています。そして一様に縄文杉中心の紹介で、「屋久島イコール縄文杉」的図式を押しつけようとしています。そういった象徴があれば番組などが作りやすいからで、それらに触発されて屋久島を訪れようとする旅人が、そういうイメージを持たされるのは無理もないことです。
 要は氾濫する情報に振り回されずに、自分だけのオリジナルの旅を探り、創り上げていくことが何よりも屋久島をうまく旅する方策だと思います。おすすめの場所とは、あなた自身が見つけたお気に入りの場所です。それを見つけようとあちこち歩き回る過程から、屋久島の旅が始まっていると言えるのではないでしょうか。 (終)

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